皆さま、こんにちは。株式会社 事成すの西本文雄です。いつもサイトを読んでくださり、ありがとうございます。
「会社の将来について話したい。でも、目の前の納期で毎日が終わってしまう」。そんな気持ちはありませんか。朝から段取りを替え、急ぎの品物を仕上げ、お客さまからの問い合わせに答える。夕方になって、今日も先の話ができなかったと感じる。製造業の現場は、それだけたくさんの仕事を支えているんですよね。
だからこそ、経営ビジョンを考える時間は大切です。ただ、立派な文章を掲げれば、それだけで会社が変わるわけではありません。「うちは、どんな仕事で頼りにされたいのか」「そのために、何ができる会社になるのか」。この二つが、毎日の選択と結びつくことが肝心です。
今回の結論は、社員が誇りを持つ仕事を確かめ、目指す姿を技術習得・仕事の選び方・必要な備えにつなげることです。会社の未来を社長一人の頭の中に置かず、現場のみんなと話せる形にしてみましょう。
この記事では、2018年の初稿で紹介した金属切削加工会社の実例を、当時の記述に沿って振り返ります。そのうえで、いま自社で取り組むなら、何を確かめ、どのように一歩を踏み出すかを整理します。後半の整理表や進め方は、今回加えた実践の提案です。事例企業が実施した事実とは分けてお読みください。
「ビジョンなんて、うちには大げさでは?」と思った方にも、どうぞお付き合いください。人数が少ない会社でも、守りたい仕事や、これから挑戦したいことはあるはずです。その思いを、現場で使える言葉にしていきましょう。
成功例は共通しているが、失敗例はさまざま
元記事では、会社ごとに抱える悩みは違っても、前へ進む会社には「目指す姿を持っている」という共通点がある、とお伝えしました。ここで確かめたいのは、成功する会社を一つの型に当てはめることではありません。自社の現場と経営の判断が、同じ方向を向いているかどうかです。
見た目の元気だけでは、会社の状態は分からない
工場が忙しく動いていても、収益につながりにくい仕事に追われているかもしれません。反対に、静かに見える職場でも、難しい加工条件を落ち着いて検討し、次の仕事の準備をしていることがあります。声の大きさや機械の稼働だけで、良し悪しを決めることはできませんよね。
同じように、整理整頓が十分でないから将来を語れない、というわけでもありません。置き場が定まらない理由に、仕掛品の滞留や急な受注変更が隠れていることもあります。気になる様子を見つけたら、人の姿勢を決めつける前に、仕事の流れを一緒に見ていくことです。
そのうえで、「何を良くするために、いまの仕事を見直すのか」が共有されていれば、改善の相談がしやすくなります。探し物を減らすのか、測定の待ちを減らすのか、難しい仕事を安心して任せられるようにするのか。目指す姿が、目の前の困りごとを選ぶ手がかりになります。
困りごとを並べた先に、共通の問いを置く
社長は新しい受注を増やしたい。現場は、今の仕事を無理なく仕上げたい。どちらも会社を思っているのに、話がかみ合わない。こうしたとき、「もっと頑張って」と伝えても、仕事の条件は変わりません。
まずは、お互いが何に困っているかを言葉にしてみてください。そのうえで、「どんな仕事なら、お客さまにも現場にも、うちの強みを活かせるだろう」と問いを置きます。売る側とつくる側をつなぐ話になると、必要な技能や納期の約束、測定の体制まで検討できるようになります。
ここで大切なのは、方向の違いと、力の不足を混同しないことです。向かう先が違うなら対話が必要です。向かう先は同じでも実行できないなら、時間、設備、技能、情報など、足りない条件を確かめる必要があります。対策は同じではありません。
ビジョンは、日々の判断を助ける道具になる
ビジョンは、会社が実現したい将来の姿です。「高品質」「信頼」といった言葉を置くだけでは、今の仕事で何を選べばよいかまでは伝わりにくいでしょう。「どのお客さまの、どんな困りごとに応えられる会社になるか」まで話すと、仕事とのつながりが見えてきます。
たとえば、短納期への対応を強みにしたい場合でも、ただ急ぐのではありません。段取りの情報をそろえるのか、受注時点の条件確認を早めるのか。それぞれ必要な備えが違います。これは考え方を説明する一般例であり、後述する事例企業の取り組みではありません。
なお、ビジョンを共有すれば必ず業績が上がる、という関係ではありません。中小企業庁の2025年版中小企業白書「経営の透明性・開放性」も、理念・ビジョンの共有と業績や定着との関連を分析していますが、結果の保証を示すものではありません。言葉を決めた後の行動と、実際の変化を見ていきましょう。
成功する企業が持つゴール意識
目指す姿は、売上目標だけでは伝えきれません。どんな価値を届け、どんな力を持つ会社になるのか。その姿が分かると、必要な道具や学ぶ内容を選びやすくなります。元記事で使った「登る山」のたとえから、もう少し具体的に考えてみましょう。
山の高さと、登りたい山は違う
売上高の目標を山の高さにたとえるなら、ビジョンは「どの山を目指すか」を決めるものです。同じ高さでも、道の状態や必要な装備は違います。売上の数字が同じでも、得意な加工を深める会社と、幅広い品種を速く届ける会社では、備える力が違いますよね。
数字はもちろん必要です。ただ、その数字を何によって実現したいのかが見えないと、仕事を増やすことと、会社の力を高めることが切り離されてしまいます。忙しくなったのに、得意な仕事に使う時間がなくなった。それでは、目指す姿に近づいているか分かりません。
元記事では理念や行動方針を登山にたとえて説明しました。実務では、各用語の使い方を厳密にそろえることより、社内で同じ意味として使えることを重視してください。この記事では、次のように整理します。
| 整理するもの | 確かめる問い | 現場とのつなぎ方 |
|---|---|---|
| 経営理念 | 何を大切にして仕事をするか | 品質や約束を守るときの土台にする |
| ビジョン | どんな会社になりたいか | 応えたい仕事と持ちたい力を表す |
| 目標 | いつ、何をどこまで実現するか | 達成した状態を確かめられるようにする |
| 行動 | そのために何を進めるか | 担当、使う時間、確認日を決める |
表は左右にスクロールして確認できます。言葉の定義を覚えるためではなく、今の会社でどの話が不足しているかを探すために使ってください。
現場で見える姿まで、言葉をほどいてみる
「お客さまから選ばれる会社になる」。その気持ちには賛成でも、現場は明日から何をすればよいのでしょうか。ここで、もう一つ問いを重ねます。「選ばれているとき、お客さまは、うちの何を頼りにしているんだろう」。
相談の段階で加工の難しさを一緒に考えられることかもしれません。測定結果を分かりやすく説明できることかもしれません。得意な内容は会社によって違います。実際の問い合わせ、過去の注文、現場の工夫から根拠を集めていくと、願望と強みを分けて話せます。
次に、その力が会社の中にどう残っているかを確かめます。特定の人だけが条件を知っているのか、記録を見れば別の人も判断できるのか。この違いが分かれば、目指す姿に向けて、技能を共有することから始めるのか、記録を整えるのかも選べます。
目指す姿と、今ある条件の両方を見る
将来を話す場で、制約ばかり並べると話が小さくなる。そう感じることもあるでしょう。でも、人手や時間を見ないまま約束を増やすと、その負担を引き受けるのは現場のみんなです。目指す姿を大きく考えることと、着手の条件を丁寧に決めることは、両立できます。
たとえば、新しい加工に挑戦したいなら、試せる材料や設備の空き、品質を確認する方法、教え合う時間を用意する必要があります。受注済みの仕事と並行して進められないなら、対象を絞る、時期を分ける、外部の力を借りるなど、進み方を選べばよいのです。
目指す姿は、日々の選択につながってこそ活きます。
経済産業省が掲載する経営デザインシートの入門資料も、これまでの事業とこれからの姿、その移行を整理する考え方の参考になります。書式を埋めることを目的にせず、自社の言葉で、今との違いを話してみてください。
ビジョン=ゴールを設定してみた会社のお話
ここからは、2018年の初稿で紹介した実例です。当時の記事では、金属切削加工業を営む、売上約3億円・従業員10名規模の会社として紹介しました。以下の規模や受注構成は、その当時の記述であり、現在の会社の状態を示すものではありません。
社長が社員に投げかけた、小さな問い
元記事でお伝えしたのは、「登る山と、その進み方を具体的に決める」という話を社長が持ち帰ったところから始まる出来事です。社長は若い社員と居酒屋に行った席で、自分たちの会社なら、どんな山を目指すのだろうと話しかけたそうです。
すると、若手から、会社が昔から得意としてきた細かい加工を深めたいという声が返ってきました。先輩から聞いた微細加工の仕事に、自分も挑戦したい。そういう仕事ができれば誇りに感じる。元記事には、そんな思いが紹介されています。
ここで受け止めたいのは、社長が新しい方針を一方的に伝えた話ではない、ということです。社員の中に、会社の得意分野への関心や期待がありました。問いを投げかけたことで、その思いが社長にも見えるようになったのです。
現場にいると、毎日扱っている技術を「いつもの仕事」と感じやすいものです。でも、若い人にとっては、これから身につけたい技術かもしれません。長く働く人にとっても、もう一度挑戦したい仕事かもしれません。皆さまの会社には、どんな思いが残っているでしょうか。
忙しさの中で見えにくくなっていた得意分野
当時の記述では、この会社は業績が下降気味で、主要な取引先A社からの受注が6割、B社からが2割。上位2社で8割を占めていました。それでも生産能力が埋まらず、得意分野とは違う仕事も受けていた、と紹介しています。
元記事が伝えていた課題は、単に受注が少なかったことではありません。会社が持つ技術と、実際に受けている仕事の間に隔たりがあり、価格面でも厳しい条件になっていたことです。目の前の仕事を確保する必要と、得意分野を伸ばす必要。その間で、社長も悩んでいたわけです。
このような局面で、得意なことに集中しよう、と言うだけなら簡単です。でも、日々の支払いがあり、社員の仕事も守らなければなりません。既存の取引を急に減らせばよいわけでもない。だからこそ、方向を決める話と、実際の移り方を考える話を一緒に進める必要があります。
この会社では、若手の声をきっかけに、社長が本来の強みを思い出したと元記事で伝えています。そして、目指す姿として「我が社は微細加工で地域No.1になる!」という言葉を掲げました。
誇りを、会社の目指す姿へつないだ
この「地域No.1」は、当時の会社が目指した言葉です。順位を調べて達成したという記録ではありません。記事を読む側も、実績の証明と、未来への意思を分けて受け取る必要があります。
もし皆さまの会社で同じような言葉を選ぶなら、続けて「何について頼りにされたいのか」を話してみてください。細かい加工といっても、対象の形状や材質、求められる品質、応えたい相談はさまざまです。具体性を足していくことで、必要な力が見えやすくなります。
また、今回の対話が居酒屋で始まったからといって、飲み会を設ける必要はありません。勤務時間の中で、参加しやすい短い対話の場をつくればよいのです。その場で話しにくい人には、後で考えを書いてもらう方法もあります。発言しやすさは、人によって違いますからね。
社員の声を聞くときは、賛成意見だけを集めないことです。挑戦したい気持ちと同時に、今の負担や不安も出してもらう。その両方を受け止めてこそ、目指す姿が自分たちの仕事につながります。
ビジョン=ゴール設定で会社がこれだけ変わった!
目指す姿が決まった後、この会社で何が変わったのでしょうか。元記事で大きく取り上げたのは、社長の意思決定でした。社員が目指したい仕事を、学ぶ機会と設備への備えにつなげていったのです。
技術を学ぶ時間を、会社の仕事として用意した
一つ目は、技術を身につける機会の見直しです。元記事によれば、従来は受注した品物をつくる中で技術を学ぶことが中心でした。その方法には、実際の仕事に結びついて覚えられる良さがあります。一方、今ある受注だけでは、次に挑戦したい技術を学ぶ機会が限られます。
そこで会社は、高い技術を持つ退職したOBに、再びアルバイトとして来てもらいました。元記事には、週2時間、技術を学ぶ機会を設けたとあります。加えて外部研修への参加を進め、学んだ内容を週に一度の勉強会で共有する形にした、と紹介しています。
ここで大切なのは、週2時間という長さをまねることではありません。目指す仕事に必要な技術を、偶然の受注任せにしなかったことです。誰から何を学ぶのか、会社として時間をどう確保するのか。その条件を具体的にした点に、参考になることがあります。
いま自社で取り組む場合は、学んだ内容を誰が試し、どう確かめるかまで決めておくとよいでしょう。研修の資料が棚に置かれるだけでは、現場の力にはなりません。試した条件、うまくいかなかった点、次に確かめることを残すと、学びを仕事へ戻せます。これは今回の提案であり、当時の会社の実施内容を追加したものではありません。
設備を買う判断が、目指す仕事と結びついた
二つ目は、測定に関する設備投資です。元記事では、従来は高精度の電子マイクロメーターを主に使っていた会社が、数千万円の三次元測定器を購入した、と記しています。微細加工で目指す姿に近づくため、顧客の要求に応える測定体制を備えようとした判断でした。
ただし、三次元測定器を導入すれば微細加工に対応できる、と一括りにはできません。対象の形状、求められる測定内容、仕様、使う環境などの確認が必要です。元記事には型式や精度条件、投資回収の資料までは示されていないため、ここで性能を評価したり、同じ購入を勧めたりはできません。
大きな投資は、意欲だけで決めないことです。目指す仕事に必要かを確かめたうえで、見込む受注、使う人、設置や維持の条件、資金の余裕まで見てください。外部への測定依頼、既存設備の活用、工程の見直しなど、ほかの方法と比較することもできます。
採算を検討する際には、J-Net21「設備投資計画における採算性の計算方法」のように、増える収益と費用を分けて整理する資料が参考になります。ビジョンに合うことと、今その条件で投資できることは、別々に確認しましょう。
報告された変化と、読み取れる範囲
元記事では、その後、若手が技術を磨いて難しい案件をこなし、難加工の受注が増え、利益率も向上したと社長から報告を受けた、と紹介しました。再会時に社長が駆け寄って報告してくれた場面には、当時の喜びが表れています。
この話の温かさは、自分たちが望んだ仕事に向けて、会社が動いてくれたことにあります。社員の思いが言葉になり、会社が学ぶ時間や道具を用意し、その機会を使って挑戦した。社長の決断と現場の努力が、つながっているんですよね。
一方、改善率や期間、比較条件を確認できる資料は元記事にはありません。成果をビジョン設定だけの効果と断定しないことです。受注環境や技術習得、設備、日々の仕事の工夫など、さまざまな要素が関わります。将来の成果や早期の回収を約束する実例として扱うことは避けましょう。
それでも、自社で何を変えられるかを考える材料にはなります。目指す姿を掲げた後、社長は何を選び直すのか。現場には、何を試せる条件を渡すのか。言葉の立派さより、その二つを確かめていただきたいのです。
社員の声を明日からの行動につなげる進め方
実例から自社の取り組みへ戻りましょう。最初から完璧な経営ビジョンを決めようとすると、話が進まないこともあります。まず一枚に、今の強み、目指す姿、試すことを並べる。それだけでも、相談の出発点になります。
会議の前に、仕事の事実を集める
まず、社長が考える強みと、現場が感じる強みを別々に書き出します。「うちは技術がある」で終わらせず、どんな仕事で、何ができたのかを添えてください。注文書、作業記録、お客さまとのやり取りなど、確認できるものから話すと、印象だけの議論を減らせます。
同時に、今の困りごとも集めます。得意な仕事に時間を使えない、条件が変わると誰に聞くか分からない、測定に待ちがある。一般的にはこうした声が、備える力を考える入り口になります。困りごとを出した人を責めず、仕組みのどこを直せばよいかに話を向けましょう。
会議では、すべてを一度に決めなくて構いません。最初は「これからも大切にしたい仕事」を一つ選びます。その仕事で、誰の役に立ちたいのか。今と比べて、何ができる会社になりたいのか。参加する人が具体的な場面を思い浮かべられる言葉にしていきます。
一枚の整理表で、やることと条件をそろえる
次の表は、社内で話すための記入項目の例です。後から振り返れるよう、決まったことと、まだ分からないことを分けて残します。数字の目標は、現状の記録を確かめたうえで決めてください。
| 整理する項目 | 書き込む内容 | 決める前に確かめること |
|---|---|---|
| 目指す姿 | 応えたい仕事と、持ちたい力 | 顧客の困りごとと自社の強みが結びつくか |
| 今との違い | 足りない技能、情報、設備や体制 | 既に使えるものが社内にないか |
| 最初に試すこと | 対象の仕事と、取り組む内容 | 通常業務と両立できる範囲か |
| 実行の条件 | 担当、協力する人、時間、道具 | 安全と品質、必要な承認を満たすか |
| 確認すること | 変化を残す記録と見直す日 | 何を見れば進んだと判断できるか |
| 見送り・再検討 | 今は行わないことと、その理由 | 条件が変わったとき何を確かめるか |
この表は、決めたことを増やすためのものではありません。限られた時間を、どの課題に使うかをそろえるためのものです。全部を急ぐと、結局どれも進まないことがあります。一つ試し、分かったことを持ち寄ってから、次を選べばよいのです。
進め方は、次の順にすると整理しやすくなります。
- 大切にしたい仕事と、今の困りごとを各自で書く。
- 根拠になる仕事の記録を見ながら、目指す姿を短く表す。
- 今との差を整理し、最初に試す対象を一つ選ぶ。
- 担当と協力する人、使える時間、確認日を決める。
- 試した事実を持ち寄り、続けることと変えることを話す。
決めた後には、意見がどう扱われたかを返してください。採用しなかった案も、理由が分かれば次の対話につながります。聞くだけで終わらせないことが、次も話してもらえる関係を支えます。対話の考え方は、J-Net21の社員とのコミュニケーションに関する解説も参考になります。
5S活動や記録を、目指す仕事への準備にする
将来の話と、今の5S活動を別々にしないことも大切です。工具や測定器を使いやすく保つこと、必要な情報を探せること、異常に気づけること。それぞれを、安心して得意な仕事に取り組むための土台として話すと、活動の意味が伝わりやすくなります。
そのうえで、同じ問題が繰り返されるなら、QC活動として原因や対策をチームで考える。仕事の動きや流れを詳しく見たいなら、IE手法を使う。会社の課題と進捗に合わせて選ぶもので、必ず一律の順番で進めるものではありません。
AIも、必要な道具をつくる手段として考えられます。たとえば、許可された作業記録から振り返り用の一覧をつくる仕組みや、社内で使う記録様式を整える用途です。事実確認は人が行い、顧客図面や機密情報の扱いを決めてから使います。加工条件や合否の判断を、確認せずAIの出力に任せることはできません。
記録は、件数だけでなく、何を試し、何が分かり、次にどうするかを残すと役立ちます。社内で共有し、公開できる部分を選んで社外へ伝えるときも、試行中と定着済み、目標と実績を区別してください。改善を続ける姿を、確認できる事実で伝えていきましょう。
ビジョンづくりでよくある質問
目指す姿を話し合うとき、きれいにはまとまらない場面もあります。ここでは、小さな会社が取り組む際の疑問を整理します。急いで言葉をそろえるより、何が引っかかっているかを確かめてみてください。
人数が少ない会社でも、文章にする必要がありますか?
必要以上に長い文章にすることはありません。ただ、近くで働いていても、考えていることまで同じとは限りません。「どんな仕事で頼られたいか」と「そのためにまず何をするか」を短く残すだけでも、受注や改善の相談に使えます。毎日顔を合わせる会社だからこそ、思い込みを確かめる機会にしたいですね。
社員から意見が出ないときは、どうすればよいですか?
会社の将来を急に聞かれても、答えにくいものです。まずは、最近うまくできた仕事、もう少し工夫したい作業、身につけたい技術から聞いてみてください。その場で結論を求めず、後で考えを返せるようにします。発言の少なさを、会社への関心の低さと決めつけないことです。
社長と社員で意見が違ったら、どちらに合わせますか?
違いが出た理由を確かめましょう。社長には顧客や資金の情報があり、社員には作業の実態があります。互いに見えていない条件を出すと、話の前提がそろいます。最後の経営判断は経営者が担いますが、理由と現場への備えを返すことが大切です。結論を急ぐ前に、確かめる仕事を一つ置く方法もあります。
設備投資をする余裕がなくても始められますか?
始められます。元記事は設備投資を伴った実例ですが、同じ投資が必要という意味ではありません。まず既存の記録や道具を見直す、技能を共有する時間を確保する、外部の力を借りるなどの選択肢を検討します。お金を使わない案でも人の時間は必要ですから、負担は確認してください。
目標どおりに進まないときは、ビジョンを変えますか?
すぐに変える前に、目指す姿、行動、実行条件のどこに差があったかを見ます。時間を確保できなかったのか、需要の見込みが違ったのか、技術上の課題が残ったのか。原因によって見直す場所が違います。前提が大きく変わった場合は、目指す姿も含めて対話し、変更の理由を残しましょう。
まとめ|自分たちの山を、現場の言葉で確かめよう
ビジョンづくりで大切なのは、会社が目指す姿と、現場で進める仕事をつなぐことです。今回の元記事では、若手が持っていた得意な加工への思いを社長が受け止め、技術を学ぶ機会と測定体制への備えにつなげた実例を振り返りました。
まねしていただきたいのは、高額な設備を買った部分だけではありません。社員の声から強みを確かめ、目指す仕事を選び、そのために必要な条件を会社が用意した流れです。皆さまの会社に合った進み方は、今の仕事と現場の声の中から探せます。
次の一歩は、最近「うちらしい仕事ができた」と感じた場面を一つ持ち寄ることです。何が役に立ち、誰の工夫が支え、これからどんな力を伸ばしたいのか。短い対話から始めてみてください。その話を、次に試す行動と、振り返る日までつなげられるとよいですね。
事成すは、「社員を元気にする。会社を元気にする。そして街を元気にする。」という思いを大切にしています。現場が力を発揮できる条件を整え、会社がより良い仕事を続けられるようにする。その積み重ねを、地域の元気につなげていきたいと考えています。
自社の目指す姿と、いま優先する現場改善を一緒に整理したい方は、株式会社 事成すの支援サービスをご覧ください。5S活動の定着から、チームで改善を続けられる体制へ。現在地に合った取り組みを、具体的な仕事から考えていきましょう。
それでは、今回はここまでです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。皆さまの会社の「登りたい山」が、現場のみんなにも見えるものになりますように。

