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中小製造業のカーボンニュートラルは意味ない?省エネと取引先対応を考える現場での始め方

2024 8/28
経営戦略
2024年8月28日2026年10月6日
カーボンニュートラルは「意味ない」?中小企業こそ取り組むべき本当の理由

「カーボンニュートラルが大事なのはわかる。でも、うちの工場で何をすればいいのか。お金をかけても仕事は増えるのか」。そんな疑問を持つ経営者は少なくないでしょう。目の前の納期、人手、電気料金に向き合う毎日です。大きな目標だけを聞かされても、すぐには動けませんよね。

私は、「意味があるか」を最初に問うのは健全な経営判断だと思います。省エネ設備を買えば必ず得をするわけではありません。排出量を計算しただけで受注が増えるわけでもない。ただ、工場で使う電気や燃料を確かめ、ムダな運転を見つけ、取引先が何を求めているかを聞く。その一歩には、環境への対応と同時に、仕事のやり方を見直す意味があります。

元の記事では「買い手よし・売り手よし・世間よし」の三方よしを軸に、このテーマを考えました。その考えは残したい。一方で、2024年に書いた補助制度や認定、資金調達の話は条件が変わりますし、あらゆる会社が同じ対応を迫られているわけではありません。今回は中小製造業の現場に立ち戻り、何を測り、何を直し、どの段階で外部の力を借りるかを整理します。

この記事の結論を先に言えば、脱炭素という看板より、エネルギーと仕事の流れを一緒に見ることが出発点です。取引先への説明も、設備投資も、実際の記録を持ってから考えましょう。大げさな宣言を急がず、御社にとって続けられる改善の順番を探していきます。どうぞ、現場の様子を思い浮かべながらお付き合いください。

目次

「カーボンニュートラル 意味ない」は本当か?

「意味ない」と感じる理由を、まずは経営の言葉に直してみましょう。費用が先に出る、効果が見えにくい、誰が担当するか決まらない。どれも実際の経営課題です。そこを飛ばして「良いことだから始めよう」と言っても、現場は動きません。

負担が先に見える経営者の感覚は正しい

工場には設備更新以外にも投資したいことが山ほどあります。人が働きやすい環境、品質の安定、設備の保全、納期を守るための余力。脱炭素に関係する投資も、その中で優先順位を決めるべきです。古い設備だからといって、すべてを一度に取り替える必要はありません。稼働が少ない設備を高価な新型機へ替えても、費用を回収しにくいでしょう。

一方、運転していない時間も空気圧縮機が動いている、必要以上の温度で加熱している、同じ物を何度も運んでいる。こうした状態なら、費用と排出の両方を見直せる可能性があります。ただし、現場の条件を確かめずに「停止すればよい」と決めるのは危険です。品質、安全、再起動の時間を含めて考えます。経営者の役目は、削減という言葉を先に掲げることより、仕事を壊さず試せる場所を選ぶことです。

効果を判断するときは「電気料金が下がるはず」だけでなく、設備の購入費、工事、保守、停止時間、使う人の手間まで数えます。作業負担が増えて続かないなら、その方法は御社に合っていません。取り組みが意味を持つかどうかは、環境への姿勢だけでなく、現場で続けられ、経営の数字で確かめられるかで決まります。

省エネと排出量を分けて考える

省エネは、使うエネルギーの量を減らす取り組みです。排出量の削減は、エネルギーの量に加え、何を使い、どのように供給されたかにも左右されます。設備の設定を変えて電力使用量が減る場合と、電力の調達方法を変えて算定上の排出量が変わる場合は、同じ話ではありません。費用がどう動くかも別です。

たとえば、電気の使用量を記録する際には、金額だけでなく使用量の単位も残します。料金単価が変われば、使用量が減っても支払額が上がることがあります。逆に料金が下がっても、使用量が増えていれば工場の改善とは言えません。生産量が大きく変わる会社なら、工場全体の使用量と、製品や工程に対する原単位の両方を見ると判断しやすくなります。製品構成が違う月を単純に比べないことも大切です。

排出量には、自社で燃料を燃やすなどの直接排出を示すScope1と、購入した電気などに伴う間接排出を示すScope2があります。原材料や輸送などを含むScope3まで最初から正確に出そうとすると、手が止まりがちです。取引先が求める範囲を確認し、自社で取得できる請求書や記録から始めてください。定義と算定の基本は環境省の資料で確認できます。

自社に意味があるかを判断する三つの問い

まず「御社のエネルギー費用のうち、どこが大きいか」。次に「取引先は何を、いつまでに、どの単位で求めているか」。そして「現場の誰が、無理なく記録と見直しを続けられるか」。この三つが曖昧なまま、認証や設備の話に進まないことです。

取引先から「排出量を教えてほしい」と言われても、工場全体なのか、製品ごとなのか、年度の実績なのか、削減計画まで必要なのかで準備は変わります。依頼書の文面を確認し、わからない点は問い合わせましょう。相手がまだ検討中で、提出様式が決まっていない場合もあります。「急がなければ取引が切られる」と思い込んで投資するより、求められた事実を確かめる方が先です。

これらの問いへの答えが見つかれば、カーボンニュートラルの話は抽象的な社会課題から、自社の工場の具体的な改善課題に変わります。答えが見つからない場合も、それ自体が出発点です。今月の電気・燃料の請求書と、現場で気になる設備を一つ持ち寄る。それだけでも、次に確かめるべきことは見えてきます。

中小企業こそカーボンニュートラルに取り組むべき、本当の理由

元の記事で私が最も伝えたかったのは、社会から言われたことに形だけ合わせる話ではありません。会社が長く事業を続けるために、買い手、働く人、地域のそれぞれに向けて、自分たちの仕事の質を見直すということです。脱炭素も、その経営の延長に置いて考えます。

三方よしを現在の取引と現場に置き直す

「買い手よし」は、良い製品を必要な時に届けることです。取引先が排出量や省エネの状況を知りたいなら、品質や納期と同じように、説明できる情報を整えることが信頼につながります。ただし、どの取引先も同じ資料を求めているわけではありません。まず相手の要求を聞き、自社で示せる範囲を伝えましょう。数字を整えるために、現場へ複雑な入力を押しつけてしまえば本末転倒です。

「売り手よし」は、現場のみんなが無理なく働けることです。設備の停止や運転条件の変更が、作業者の安全や品質を損ねてはいけません。古い設備の異常や熱の逃げを見つける活動が、保全の見直しや働きやすさにもつながるなら、取り組む価値は広がります。反対に、記録作業が増えるばかりで誰も結果を見ないなら、やり方を変えるべきです。改善の負担と成果を、同じ場で話せる仕組みをつくります。

「世間よし」は、地域や社会への影響を見つめることです。地域で使うエネルギーや資源を大切にし、実際に減らせたことを根拠とともに伝える。これは会社の姿勢を示します。ただし、「三方よし」は経営を考えるための言葉で、認証を取れば達成したと証明されるものではありません。大きな宣言より、毎年の記録と現場の行動を積み重ねたいものです。

取引先の要請を事実として確かめる

大企業が自社の工場だけでなく、原材料や部品の調達先まで含めて排出を把握しようとする動きはあります。経済産業省の中小企業向け資料でも、サプライチェーン全体での脱炭素が課題として扱われています。一方、すべての中小企業に同じ義務があるわけではありません。扱う製品、顧客、契約、規模で必要な対応は異なります。

取引先から質問票が届いたら、まず社内で保管し、質問を「今ある資料で答えられるもの」「集計すれば答えられるもの」「算定方法の確認が必要なもの」に分けます。回答期限も確認します。年度や工場の範囲が指定されているなら、その条件を記録してから集計を始めます。過去の電気使用量を急いで足し算しても、対象期間や拠点が違えば相手の質問に答えられません。

要請がまだない場合も、取引先の公開方針を見て、次回の商談で必要になりそうな項目を聞いてみることはできます。「わが社は何を準備すれば役に立ちますか」と尋ねれば、相手の期待を具体化できます。ここで確かめたいのは、脱炭素をしていると見せる方法ではなく、継続して取引するために必要な情報と改善です。

小さな工場にある改善の速さ

中小製造業には、経営者と現場の距離が近いという強みがあります。たとえば、ある工程で待機中の設備が動いていると気づいたとき、保全担当と作業者がその場で理由を確認し、小さな変更を試すことができます。もちろん、停止による不良や納期遅れがないかは確かめます。決める速さだけでなく、試した後に直せる近さが強みです。

この進め方は、5S活動の考え方ともつながります。物の置き場や表示を整えることで、探す時間や余計な運搬が見える。設備の周囲を点検しやすくすれば、漏れや汚れ、異常な熱にも気づきやすくなります。ただし「5SをすればCO2が減る」と短絡させないことです。現場の変化と電気・燃料の記録を照らし、削減につながったかを確かめます。

改善案は一人で背負わせず、使う人と一緒に考えます。記録係が毎日細かな数字を入力する仕組みより、既存の請求書やメーターを使い、月に一度振り返る方法が続く場合もあります。取引先からの要請が強くなれば、そこから計測の精度を上げればよいのです。自社の現在地に合う大きさで始めてください。

利益と排出量を同時に見る判断表

候補を選ぶときは「CO2を減らすらしい」という説明だけで決めません。次のように、費用、現場、取引先への説明を分けて比べます。ここに示すのは判断のための項目で、効果を保証するものではありません。

取り組みの候補 先に確かめる事実 費用・現場の確認 対外的に説明できること
設備の待機運転を見直す 待機時間、停止できない理由 品質・安全・再起動の手間 変更前後の運転時間と使用量
エア漏れを点検する 漏れの場所、圧力、稼働時間 修理費、停止時間、再点検 修理と使用量の記録
高効率設備へ更新する 現設備の使用量と残存年数 導入費、工事、保守、回収見込み 更新前後の条件と実績
電力の調達を見直す 契約と算定に用いる情報 料金、契約期間、供給条件 何を変更し、どの範囲で算定したか

費用が下がる取り組みと、排出量の説明がしやすくなる取り組みは一致することもあれば、ずれることもあります。その違いを隠さず、判断した理由を残してください。経営者が「なぜこれを先にやるか」を伝えられることが、取り組みを一過性で終わらせない土台になります。

カーボンニュートラルへの第一歩

「よし、始めよう」と決めたら、最初にするのは大きな設備投資でも宣言でもありません。今ある資料を集め、何がわかっていて、何がわからないかを見ます。中小企業庁の中小企業白書も、知る、測る、減らすという段階を示しています。工場では、その順番を日々の仕事に合わせて具体化することが必要です。

境界を決めて電気と燃料を集める

まず対象を一つの工場、または一つの事業所に決めましょう。複数の拠点を一度に混ぜると、どこで使ったエネルギーかわからなくなります。過去の電気料金明細、ガスや燃料の購入記録、車両の燃料など、手元にあるものを集めます。請求書には金額だけでなく使用量が書かれています。何月分か、検針期間はいつか、工場以外の使用が含まれるかを揃えます。

電気は購入したエネルギーによる間接排出、工場で燃やす燃料は直接排出など、分類が異なります。最初から完全な数字を作ろうとせず、対象範囲を明記した概算を出し、足りない情報を一覧にします。排出量への換算係数は年度や電力の契約等に関係するため、最新の公的資料を確認します。計算結果だけを保存するのではなく、元の使用量、係数、計算した人、対象期間を残してください。後から質問を受けたときに説明できます。

月ごとに並べた数字が大きく変動しても、すぐ「ムダが増えた」と判断しないことです。生産量、製品の種類、稼働日数、外気温、設備の点検や故障などを横に書き添えます。同じ量を作った月同士で比べられるかを確かめてください。比較の条件が揃っていない数字から投資判断をすると、現場の工夫も見誤ります。

工程と設備で使用を見えるようにする

工場全体の請求書が見えたら、どの工程に目を向けるかを決めます。電力を多く使いそうな設備を、稼働時間とともに挙げます。大きな機械だけとは限りません。空気圧縮機、空調、集じん、乾燥、加熱など、止めにくい設備や長時間動く設備も候補です。ただし、実測がなければ「多いはず」と決めつけず、仮説として扱います。

いきなり全設備へ計測器を付ける必要はありません。既存のメーターや運転日誌、設備の表示、作業時刻の記録で把握できることがあります。可能なら、通常の生産日と休日・休憩時の使用状況を比較します。待機時の消費が見つかっても、安全上や品質上の理由で止められない設備はあります。作業者、保全担当、経営者が理由を共有し、変更可能な範囲を決めることが大切です。

「見える化」は、立派な画面を作ることではありません。現場の人が数字を見て、原因を話し、次の動きを決められる状態です。月ごとの電気使用量を一枚の紙や簡単な表にして、工場の出来事と一緒に振り返る。まずはこれで十分な会社もあります。記録を公開用に整えるのは、社内での意味が見えてからにしましょう。

設備投資の前に現場で試す

設備を替える前に、運転時間や設定、保全の状態を見直します。エア漏れ、不要な照明、過度な空調、清掃不足、段取りの待ち時間など、対象は工場によって異なります。試すときは一度に多くを変えず、何を変えたかがわかるようにします。改善前後で生産条件が違えば、結果の読み方にも注意が必要です。

たとえば設備の待機時間を短くする案なら、まず一工程で試し、作業開始時の立ち上がり、品質、作業者の負担を確認します。問題がなければ、使用量の変化を見る。効果が小さくても、運用が安定していれば続ける価値があるかもしれません。逆に省エネの数字が出ても、納期や品質に無理が出るなら採用しない。省エネを仕事の質と切り離さないことが、長く続ける条件です。

現場で改善しきれない設備は、更新案を比較します。新品の仕様値だけでなく、御社の稼働条件でどれだけ使うか、工事中の生産をどうするか、保守を誰が担うかを確認します。省エネ効果の簡易算定や設備更新の資料は環境省の工場・事業場向けサイトにもあります。試算は投資を決める材料の一つであり、実績とは区別します。

省エネ診断、中小企業版SBT、ESG資金調達の位置づけ

元記事では三つを取り組みやすい選択肢として挙げました。現在の順番としては、まず省エネ診断、必要が見えた段階で目標の認定や資金調達を検討するのが現実的だと考えます。もちろん、取引先から認定や目標設定を具体的に求められているなら、その条件を優先して確認します。

省エネ診断は、社内では見落とす使用状況や運転条件を専門家と確かめる機会になります。ただし、診断を受けた時点で削減が実現するわけではありません。提案のうち、すぐ試せること、投資が必要なこと、御社には合わないことを分けます。実施した後の数字を確認するところまで含めて活用したいものです。

中小企業版SBTは、科学的根拠に沿った目標設定と、その妥当性の確認に関わる仕組みです。SBTiの公式資料で対象条件、申請内容、費用、報告の扱いを確認してください。認定が御社の取引や事業方針に役立つかを見ずに、最初の一歩として申し込む必要はありません。ESGに関連する資金調達も同様で、金融商品ごとに要件や金利、報告義務が異なります。活動を始めたら自動的に有利な条件になるわけではないため、設備投資と資金計画が具体化してから金融機関と相談します。

活用できる支援制度

費用や知識が足りないと感じたとき、外部の支援を使う選択肢があります。ただし、制度の名称が同じでも、年度ごとに対象、募集期間、補助率が変わります。2024年の元記事にある数値を、そのまま今の申請に使うことはできません。ここでは制度を探す順番と、利用を判断するための見方を整理します。

省エネ診断をどう使うか

何に電気を使っているのかわからない工場なら、省エネ診断は有力な入口です。相談する前に、電気・燃料の明細、設備の一覧、主な稼働時間、困っていることを一枚にまとめておきます。「電気代を下げたい」だけより、「休憩中も動く設備がある」「古い空調の更新時期を知りたい」と伝える方が、現場に合う助言を受けやすいでしょう。

診断の提案は、短期に運用で試せるもの、中期に保全や設定を変えるもの、設備更新を伴うものに分けてください。そして誰が試し、いつ数字を見るかを決めます。報告書を保管するだけでは現場は変わりません。診断の費用や支援の有無は実施主体や年度によって異なるため、申し込み前に経済産業省の中小企業向け案内などから現在の窓口を確認します。

外部の専門家に見てもらうときも、現場の知恵は欠かせません。設備を止められない理由、季節ごとの品質条件、繁忙期の変動は、その工場で働く人が知っています。診断で得た提案を現場と一緒に点検し、できることから実施する。外部の視点と内部の経験が合わさって、ようやく実行できる案になります。

補助金と設備更新をどう判断するか

省エネ補助金は、費用負担を軽くできる場合があります。しかし、補助金があるから設備を買う順番にすると、工場の課題から離れてしまいます。先に現在の使用量、設備の状態、更新によって何を良くしたいかを整理します。補助金がなくても必要な投資なのか、採択されなかった場合にどうするのかまで考えます。

比較では、購入費だけではなく、工事、廃棄、設置場所、試運転、保守、故障時の対応を含めます。申請に必要な書類や発注時期にも条件があります。契約や発注をしてからでは対象外になる制度もあるため、最新の公募要領を先に確認してください。元記事に載せた特定の補助率や上限額は、現在の制度へそのまま引き継ぎません。

効果の見込みは、設備メーカーのカタログ値を御社の稼働条件へ置き換えて考えます。年間の稼働時間が少ない設備と、毎日長く動く設備では、同じ効率改善でも費用対効果が異なります。生産量が増えるなら工場全体の排出量が増える可能性もあります。何を基準に減ったと判断するのか、更新前に決めておきましょう。試算と実際の削減量を後から比べることで、次の投資判断も良くなります。

税制や金融商品は適用条件を確認する

税制優遇や環境関連の融資は、該当する設備、事業者、認定、手続き、適用期間などの条件を持ちます。名前に「カーボンニュートラル」や「ESG」とあっても、御社の計画が必ず対象になるわけではありません。税務の判断は専門家と、融資条件は金融機関と、正式な資料を見ながら確認してください。元記事の「低金利で資金調達できる」といった表現は、個別審査を経ない約束として受け取られないように改めます。

支援策を探すときは、国の制度に加え、都道府県や市町、商工会議所などの案内も確認できます。ただし公的な相談と、民間の支援を受ける判断は別です。まず課題を明確にし、何を自社で行い、どこに専門知識が必要かを分けましょう。申請書を書くための計画より、実行できる改善計画が先です。

外部支援を使った後は、社内に判断の理由が残るようにします。なぜその設備を選び、何を測り、想定と違ったらどう直すか。記録があれば担当者が替わっても活動を続けられます。支援制度は会社の代わりに改善してくれるものではありません。御社の現場で進める取り組みを、必要な時に後押しする道具です。

よくある質問

工場の状況も取引先の条件も違います。ここでは、最初の相談で出やすい疑問について、判断の順番を短く整理します。

排出量を測れないと取引できませんか?

すべての会社に一律の条件が課されているわけではありません。取引先から要請がある場合は、まず対象期間、対象工場、製品単位か事業所単位か、計算方法、提出期限を確認します。すぐに完全な数字が出せないときは、今把握できる範囲と、追加で必要な情報を整理して相談しましょう。根拠が曖昧な数字を急いで提出するより、範囲を明示して説明できることが大切です。

CO2が減れば電気代も必ず下がりますか?

必ずしも同じ方向には動きません。電気の使用量、料金単価、契約内容、排出量の算定に用いる情報は別々です。使用量が減っても単価が上がれば支払額は増えることがあります。また、電力の調達方法を変えて算定上の排出量が減っても、料金は上がる可能性があります。改善案ごとに「使用量」「費用」「排出量」の三つを分けて見てください。

最初から中小企業版SBTを取得すべきですか?

自社の取引先が求めているか、目標を社外に示すことが事業方針に合うかで判断します。最初の請求書整理や現場の省エネに、認定が必須というわけではありません。申請する場合は、SBTi公式の現行要件、対象範囲、必要なデータ、費用、申請後の対応を確認しましょう。認定は日々の改善に代わるものではなく、一定の条件に沿って目標を示すための選択肢です。

どの数字を社外へ示せばよいですか?

まずは求められている数字を確認します。自主的に発信するなら、対象期間と範囲、何を測ったか、比較の条件をセットで示しましょう。「排出量を減らしました」という一文だけでは、どの工場のどの期間かわかりません。改善前後の写真や作業の工夫を伝える場合も、取引先の情報や作業者の写り込みに気をつけます。成果がまだ小さくても、測って見直す姿勢は誠実に伝えられます。

まとめ:カーボンニュートラルは「意味ない」?

「意味ない」と感じる背景には、費用と手間に見合う効果が見えないという、もっともな疑問があります。私はその疑問を押し込めたまま、立派な目標だけを掲げるべきではないと思います。電気と燃料の使用を知り、現場のムダを確かめ、取引先の要請を具体的に聞く。 そこから始めれば、御社にとって何が必要かを判断できます。

元記事の三方よしは、今も大切にしたい視点です。買い手には品質と説明できる情報を、働く人には無理のない改善を、社会には実際に取り組んだ結果を示す。三つのどれかを犠牲にする方法は長続きしません。省エネ、排出量、費用、働き方を同じ机の上で見てください。

進め方は、知る、測る、減らすの順です。まず請求書と設備の稼働を見ます。次に改善できそうな工程を一つ選び、品質や安全を確かめながら小さく試します。必要があれば省エネ診断を利用し、設備更新や目標の認定、資金調達は、その結果を踏まえて判断します。制度の条件は変わるので、申請前には必ず公式の最新情報を確認しましょう。

最初の一歩に迷うなら、今月の電気料金の明細を一枚持って、現場のみんなにこう聞いてみてください。「この工場で、使っていないのに動いているものはないだろうか」。答えが出たら、すぐに止めるのではなく、なぜ動いているのかを確かめる。その対話が、環境への対応を御社の改善力へ変えていきます。

株式会社事成すでは、5S活動を入口に、現場の気づきを記録し、チームで改善を続ける仕組みづくりを考えています。エネルギーの課題も、特別な誰かに任せきりにせず、現場で見える事実から整理したい方はお問い合わせで御社の状況をお聞かせください。必要な確認事項と、次の一歩を一緒に考えます。

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この記事を書いた人

西本 文雄(にしもと ふみお)のアバター 西本 文雄(にしもと ふみお)

西本文雄|株式会社事成す代表取締役・中小企業診断士。製造現場、生産管理、購買の実務経験を生かし、中小企業の経営と現場をつなぐ支援に取り組む。5S活動を入口に、社員が自ら考え、チームで改善を続けられるしくみづくりを重視。現場で働く人の知恵と経営者の想いを結び、品質向上や生産性向上につながる実践的な情報を発信しています。難しい理論より、日々の仕事で試せる工夫を大切にし、現場目線でわかりやすく伝えます。

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