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中小製造業の貸借対照表の読み方|資産・負債・純資産から現場と資金状態を読み解く実践法

2018 9/26
財務デザイン
2018年9月26日2026年10月16日
これでわかった!究極にわかりやすい決算書の読み方講座(BS編)

皆さま、こんにちは。中小企業診断士の西本文雄です。工場には材料も設備もある。仕事も続いている。それなのに、手元のお金には余裕がない。決算書を前にして、「うちの会社は、今どうなっているんだろう」と考えることはありませんか。

今回の結論は、貸借対照表の資産・負債・純資産を、現場の品物や設備、入金と支払いの予定へ結びつけて読むことです。科目の名前を覚えるだけではなく、何が増え、なぜ残り、いつ動くのかを確かめます。そこから、次に取り組むことを選んでいきましょう。

元の記事では、貸借対照表に「会社の生き様が刻まれる」とお伝えしました。設備を導入し、仕事を引き受け、利益を残し、必要な資金を調達する。そうした歩みが、決算時点の数字につながっています。会社の歴史を読み解く入口として、私はこの見方を大切にしたいと思っています。

ただし、数字だけで経営者の人柄や、会社の社会への貢献を決められるわけではありません。工場で働く人の努力や、培ってきた技術が、すべてそのまま金額として載るわけでもありません。今回は、その限界も踏まえながら、現場と経営をつなぐ読み方を整理します。どうぞお付き合いくださいませ。

目次

貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)

貸借対照表は一定時点の財政状態、損益計算書は一定期間の経営成績を示します。両方を見ることで、仕事の結果と、その時点で保有する資産や負っている義務を関連づけて考えられます。ここでは一般的な単体企業の決算書を念頭に進めます。

BSは、その日の状態を切り取った一枚です

貸借対照表は、英語のBalance SheetからBSやB/Sとも呼ばれます。決算日の時点で、どのような資産があり、負債と純資産がどうなっているかを示す表です。月次の資料であれば、月末時点の状態を確認することもできます。

工場の棚を思い浮かべてみてください。そこにある材料の数量は、その時点の状態です。一方、その月に何個仕入れ、何個使ったかは、期間中の動きです。この違いを意識すると、残高を示すBSと、期間の成績を示すPLを分けて捉えやすくなります。

PLで利益が出ていても、その分が預金として残っているとは限りません。販売代金がまだ入っていない、材料や仕掛品が増えた、設備を購入したなど、お金の姿が変わっていることがあります。「利益はあるのに、お金がない」という問いを考えるとき、BSの内訳が手掛かりになります。

左と右は、同じ会社の状態を違う側から見ています

基本的な関係は、資産の合計が、負債と純資産の合計に等しいというものです。左側の資産は資金の運用状況、右側の負債・純資産は調達の構成として理解できます。この入口は、中小企業庁「中小企業の会計31問31答」問4でも確認できます。

ただし、個々の預金や設備に、「この借入金で買った」と一対一の札が付いているわけではありません。会社全体で、何に資金が向かい、それをどのような資金が支えているかを考えるための見方です。左右の関係を押さえたうえで、内訳と契約、実際の仕事を確認していきます。

読み始める前に、日付と単位をそろえましょう

最初に、いつ時点の表か、金額の単位は何かを見ます。決算書と最新の月次資料を並べる場合には、反映済みの取引や未確定の項目が違うかもしれません。表の数字を比べる前に、比較できる状態かを確認してください。

読み始めは、現預金、売掛金、棚卸資産、借入金、純資産など、自社の気になる項目からで構いません。すべての科目を一度に説明しようとすると、かえって難しく感じますよね。一つの変化を見つけ、内訳へ戻るところから始めてみましょう。

【資産】とは、今、会社が持っているすべてのモノ

資産の部には、現預金、売掛金、在庫、設備など、会計上の資産として認識されたものが並びます。見出しでは分かりやすく「すべてのモノ」と表現していますが、会社にある価値が例外なく載るという意味ではありません。

現預金と売掛金は、使える時期が違います

現金や預金は、手元の資金を確認する入口です。ただし、残高だけで今後の余裕は判断できません。すでに予定している支払いや、自由に使える範囲も合わせて確認します。決算日の残高が大きくても、翌日の支払いが多ければ見え方は変わります。

売掛金は、売上を計上したものの、まだ代金を受け取っていない債権です。残高が増えたら、売上の増加に伴うものか、入金までの期間が延びたものか、支払期日を過ぎたものかを分けて見ます。売掛金があることと、予定どおり入金されることは同じではありません。

請求の漏れや、検収条件の確認待ちがないかも、担当する人と確かめたいところです。経理の数字だけを眺めるより、営業や出荷の情報と合わせると、次に確認することが見つかりやすくなります。

在庫は、何が、どこに、なぜ残っているかを見ます

製造業の棚卸資産には、材料、製造中の仕掛品、完成した製品などがあります。同じ在庫の増加でも、受注に備えた材料と、仕様が決まらず止まっている仕掛品では、事情が異なります。金額だけで「多すぎる」と決める前に、中身を確かめましょう。

品番、置き場所、数量、状態、対応する受注、次に使う予定を確認します。使える材料なのか、加工待ちなのか、出荷を待っているのかが分かると、必要な対応も変わります。図面や仕様の変更があったものは、現場で持っている情報を経理側へ伝えることも大切です。

帳簿の在庫額が、そのまま現金として戻るとは限りません。販売や使用の見通し、追加で必要な加工、評価の扱いを確認する必要があります。不要そうだからと勝手に捨てるのではなく、所有関係や品質、契約も確かめて対応を決めてください。

設備は、帳簿の金額と使われ方を合わせて見ます

建物や機械などは、固定資産として確認する代表的な項目です。帳簿の額は、購入時の金額や減価償却などの会計処理に基づくもので、今売った場合の値段や、生産できる能力と同じではありません。帳簿上の額が小さくても、大切な仕事を支える設備はあります。

設備台帳と現物を照らし、何をつくる設備か、どの工程で使っているか、止まると何に影響するかを確認しましょう。金融庁の「業種別支援の着眼点」製造業編でも、固定資産台帳を生産の理解につなぐ視点が示されています。

なお、流動・固定の区分は「1年以内になくなるか」だけでは説明できません。通常の営業の循環や、回収・支払の期限などに基づく基準があります。個別の区分は、自社に適用するルールを会計専門家と確認しておきましょう。

帳簿に出ない強みも、大切にしてください

ベテランさんの加工の勘所、得意先との信頼、みんなで改善を続ける力。こうした価値は、それぞれがそのままBSへ計上されるわけではありません。資産の部は、会社の価値をすべて写した一覧ではないのです。

だからこそ、財務の資料と、現場の取り組みの記録を組み合わせたいですね。数字で分かることと、仕事を見ないと分からないことをつなげる。その両方が、自社を理解する材料になります。

貸借対照表(BS)とは会社の生き様を記す指標!

貸借対照表には、これまでの投資や資金調達、損益などの結果が反映されます。「会社の生き様」という表現は、その歩みを考えるためのたとえです。一枚の表で会社のすべてが分かる、という意味にはしないでください。

金額の増減に、仕事の出来事を添えます

設備が増えたなら、どのような仕事に備えて導入したのでしょうか。在庫が増えたなら、受注に合わせた手配なのか、工程の途中で止まっているのか。借入金が増えたなら、何の資金を賄い、今どのように使われているのか。数字に出来事を添えると、会社の動きが見えやすくなります。

前期末と今期末を並べるのは、その変化を見つける方法の一つです。ただ、期末だけでは、その途中の動きが分からないこともあります。決算月だけ受注や仕入れが集中した可能性もあります。気になる項目は、月次の残高や内訳まで戻って確かめましょう。

表に載っている金額は、過去に起きたことと、決算時点での評価や分類を踏まえています。創業以来の出来事が全部そのまま保存されているわけではありません。取得、売却、返済、費用化などの動きもあります。「現在の残高に至った理由」をたどるために使うのがよいと思います。

同じ残高でも、背景が違えば見る点が変わります

借入金が多いという事実だけで、経営が悪いとは決められません。設備投資を進めた会社と、日々の支払いを賄うために資金を調達した会社では、確認する内容が異なります。何に使い、事業の結果はどうなり、返済の予定に無理がないかを合わせて見ます。

現預金の増加も同様です。事業から資金を生み出したのか、借入や出資で増えたのか、資産を売却したのか。BSの増減だけで理由を確定せず、PLや資金の記録、契約内容を照らし合わせてください。左右の数字は、問いをつくる入口なのです。

数字から、会社や人の価値まで決めつけません

純資産の額や借入の多さだけで、経営者の能力や社員への思いは判断できません。災害や市場の変化、事業の立ち上げなど、その会社の事情もあります。財務の状態に課題があるなら、必要なのは原因を確かめ、次の対応を考えることです。

私は、数字を前にして、現場のみんなの頑張りまで否定するような使い方はしたくありません。工夫してきたことは何か、どこで負担が増えているか、続けるために何が必要か。その話を聞くためにも、表を使っていただきたいのです。

会社の歩みを確かめ、次の選択に役立てる。それが、BSを読む意味です。見栄えのよい表をつくることより、実際の状態を正しく知り、仕事を良くしていく順番を大切にしましょう。

【負債】は世の中から借りてきている金額

負債には、金融機関からの借入だけでなく、買掛金や未払費用など、これから支払い等を行う義務も含まれます。見出しの「借りてきている」は資金の背景をイメージする表現です。すべてが借入契約によるお金ではありません。

買掛金や未払費用は、仕事と支払いの時間差です

買掛金は、材料などを仕入れたものの、まだ支払いを終えていない債務です。未払費用は、継続して提供を受けるサービスなどについて、すでに発生している費用のうち未払いの部分を捉える項目です。細かな科目の使い分けは、自社の処理と専門家の説明を確認してください。

負債があること自体を、悪いことと考える必要はありません。通常の取引でも、受け取る時期と支払う時期には違いがあります。大切なのは、何の支払いが、いつ、いくら必要かを把握し、予定どおり対応できるようにすることです。

買掛金が増えたときは、仕入れが増えたのか、支払条件が変わったのか、期日を過ぎた支払いがあるのかを分けて確認します。残高が増えた理由を知らずに、資金に余裕が出たと思い込まないようにしたいですね。

借入金は、使い道と返済の予定を合わせて見ます

借入金の残高を確認したら、資金使途、返済額、返済期日、利息や保証などの条件を整理します。BSの残高は、これから毎月いくら支払うかを、そのまま一覧にしたものではありません。返済予定表や契約内容と合わせて見てください。

長期借入金であっても、近い時期に返済する部分の表示を確認する必要があります。役員から借りている場合も、相手が身近だからといって返済条件を曖昧にせず、残高と取り決めを確かめます。流動・固定の区分を、相手の名前だけで決めないことです。

設備の導入に伴う借入なら、設備が動き始める時期と、入金や返済の予定を並べてみましょう。導入直後から予定どおりに仕事が増えるとは限りません。準備や立ち上げの期間も含め、資金繰りを確認しておくと、変化があったときの相談に使えます。

先に受け取ったお金にも、その後の仕事があります

前受金など、代金を先に受け取っている場合もあります。預金が増えていても、製造や納品など、これから果たす仕事が残っているかもしれません。入金した額を、そのまま自由に使える利益と考えないようにしてください。

また、期末のBSだけで、将来の支払いをすべて把握できるわけではありません。発注済みでまだ計上されていない設備や材料など、今後の予定もあります。支払予定や受注の記録を持ち寄り、表に載った残高と、これからの動きをつなげましょう。

支払いの遅れや資金不足が心配になったら、状況を整理して、取引金融機関や専門家へ早めに相談してください。無断で期日を変えるのではなく、契約と相手先への説明を踏まえて対応を考えることが大切です。

【純資産】で表される会社の歴史と経営方針

純資産は、資産から負債を差し引いた部分です。出資や利益の積み重ねなどが反映され、財務の構成を考えるうえで大切です。ただし、純資産の額だけで会社の歴史や方針の良否を判定することはできません。

資本金と利益の積み重ねだけで終わらせません

純資産には、資本金、資本剰余金、利益剰余金などの項目があります。企業や適用する会計基準によって、ほかの項目も含まれます。最初は、株主からの出資に関わる部分と、事業の損益の積み重ねに関わる部分を分けて見ると、理解しやすくなります。

当期純利益は、利益剰余金の増加につながります。一方、損失や配当などは、その残高を減らす要因になります。純資産全体では、増資や減資などの動きも確認します。前期より増えたという結果だけで、すべて本業で稼いだ成果と考えないようにしましょう。

何が変わったかは、株主資本等変動計算書や内訳、会計専門家の説明を合わせて確認します。難しい名称を丸暗記するより、自社で起きた出来事と、どの項目が動いたかを対応させることから始めてください。

純資産は、自由に使える現金の残高ではありません

利益を残してきても、その資金は設備、材料、売掛金などに形を変えていることがあります。純資産が大きいから、同じ額だけ使える預金があるとは限りません。純資産と現預金は、表の違う側から捉えている情報です。

また、純資産の額が、そのまま会社を売買するときの価値になるわけでもありません。将来の収益、資産や負債の内容、条件など、別に確認することがあります。この金額だけで会社の値段や成長余力を決めつけないでください。

利益を積み重ね、必要な投資や変化に備えることは大切です。その際も、利益を増やすこと、資金を確保すること、必要な仕事へ使うことを分けて考えます。余分な支出を増やして税負担だけを減らすと、手元資金を失うこともあります。税務上の判断は専門家と確認し、事業に必要な支出かを見極めましょう。

債務超過は、原因と対応を考えるために受け止めます

負債が資産を上回り、純資産がマイナスになっている状態は、債務超過と呼ばれます。財務上の重要な課題ですが、それをもって「社会に貢献してこなかった会社」と評価することはできません。会社や働く人の価値と、会計上の状態は分けて考える必要があります。

債務超過という状態だけで、直ちに支払いができなくなると決めることもできません。ただし、今後の事業や資金調達へ影響する可能性があるので、放置せず、損失の原因、資産の内容、資金繰りと改善策を専門家や金融機関と確認しましょう。

ここで進めたいのは、経営者を責めることではありません。現場が続けてきた仕事を守り、必要な変化を選べる状態へ近づけることです。数字を正しく受け止めることと、人の努力を大切にすることは、両立できるのです。

現場の記録をつなぎ、貸借対照表を月次の改善に使う

月次では、気になる残高の変化を一つ選び、内訳と現物を確かめ、次の対応と確認日を決めます。経理の数字を現場へ渡すだけでなく、現場で分かった事情も数字の確認へ戻していくことが大切です。

最初は、一つの残高とその内訳から始めます

現預金、売掛金、在庫、借入金などを前月や前年同月と比べ、変化が気になる項目を選びます。季節や受注の状況による違いもあるので、増えたから悪い、減ったから良いとは決めません。まず、何が動いたかを書き出しましょう。

次に、明細と根拠を確認します。在庫なら品目や数量、売掛金なら取引先別の残高や入金予定、借入なら返済予定などです。個人や得意先の情報をむやみに共有せず、話し合いに必要な範囲で資料を用意してください。

気になる項目 内訳で確かめること 現場や担当者に聞くこと 次の対応の例
売掛金 期日、請求、入金の状況 検収や請求の確認待ちはあるか 未確認の条件を確かめる
材料在庫 品目、数量、評価、使う予定 対応する受注や仕様は有効か 使用予定と保管場所をそろえる
仕掛品・製品 工程、完成・出荷の予定 止まっている理由は何か 次の工程や出荷条件を確認する
設備 台帳、取得・処分の記録 稼働、保全、代替手段はどうか 現物と台帳の差を調べる
借入・買掛金 期日、返済・支払の予定 関連する受注や仕入れの予定はどうか 資金繰り表へ反映する

この表は、会話の入口として使ってください。すべてを新しく記録する必要はありません。手元の受注表、作業日報、設備台帳などを使い、何が分かれば判断を進められるかを決めるところからです。

比率は、確認を始める目印として使います

自己資本比率は、ここでは簡便に純資産合計を資産合計で割り、百分率で見る方法を使います。自社の純資産の項目や分析方法によって扱いが異なる場合があるので、計算の前提をそろえてください。比率が変わったときには、純資産と総資産のどちらが、何によって動いたかも見ます。

流動比率は、流動資産を流動負債で割り、百分率で表すものです。短期の支払いを考える目印になりますが、流動資産に在庫や回収が遅れている債権が多ければ、その額をすぐ支払いに使えるわけではありません。分母がゼロの場合など、単純に計算できないケースもあります。

中小機構の経営自己診断システム「個別指標一覧」でも、こうした算式と注意点を確認できます。本記事では一律の目標値を置かず、資産の内容と支払時期を合わせて見ることを重視します。比率が高いことだけで安全を保証するものではありません。

記録の整備を、仕事の進めやすさへつなげます

品物の置き場所と状態が分かると、棚卸の確認だけでなく、探す、重ねて発注する、次の工程が分からず待つといった負担を調べやすくなります。5S活動で現物と情報をそろえる取り組みは、こうした事実確認の土台にもなります。

ただし、整理して場所が空いたことと、資金が戻ったことは別です。廃棄して帳簿の額が減っただけなのか、使う予定がついて新たな購入を見直せたのか、販売して入金されたのか。それぞれを分けて記録しましょう。金額へ置き換えた見込みを、入金済みの実績として扱わないことが大切です。

次の行動と、確かめる日を決めます

数字の理由を話し合ったら、何を、誰が、いつまでに確認するかを決めます。使う予定が分からない材料なら、対象品目と確認先を絞る。入金の予定が曖昧なら、請求や検収の状態を確かめる。大きな計画より、動ける一件へ落とし込んでみてください。

次に集まるときは、実施したこと、分かったこと、残る課題を分けて振り返ります。BSの残高だけでなく、作業や情報の流れがどう変わったかも聞きましょう。記録した人に結果が返ると、「調べてよかった」「次はここを直そう」という話につながりやすくなります。

資金不足の心配がある場合は、この月次確認だけで済ませず、近い日付の入出金予定を確認してください。表の数字と現場の事情を持って、金融機関や専門家へ相談する準備を進めましょう。

貸借対照表を読むときによくある質問

BSを使うときは、数字が何を表し、何を表していないかを分けると理解しやすくなります。残高だけで判断を急がず、内訳、時期、実際の仕事を組み合わせて確かめましょう。

純資産が増えているのに、預金が減ることはありますか?

あります。利益などで純資産が増える一方、売掛金や在庫、設備などが増えたり、借入金の返済に資金を使ったりすることがあります。純資産の増減と、現預金の増減は同じではありません。何が動いたかは、BSの各項目、PL、入出金の記録を合わせて確認してください。

単純な前期との差額だけでは、途中の資金移動や非資金の取引まで分からないこともあります。必要なら会計専門家と資金の動きを整理しましょう。説明を聞く際には、「この増減は、どの取引や支払いと対応しますか」と尋ねると、仕事とのつながりを理解しやすくなります。

在庫を減らせば、その分だけ現金が増えますか?

在庫が減った理由によります。販売して入金された場合と、生産に使った場合、廃棄した場合では、現金への影響が違います。在庫の減少額を、そのまま資金の改善額として扱わないでください。

どの品物をどう動かしたか、追加の仕入れがどう変わったかまで確かめます。必要な材料まで減らして納期に影響が出ては困りますよね。数量だけを目標にせず、仕事を続けるために必要な量と、見通しのない滞留を分けて考えましょう。

借入金は、少なければ少ないほどよいのでしょうか?

使い道や事業の状態、返済の見通しによります。借入金を減らすために手元資金を使い切れば、必要な支払いに困るかもしれません。一方、使い道や返済の根拠が曖昧なまま増やすことも避けたいところです。残高の大小だけで結論は出せません。

手元資金、今後の入出金、設備や運転資金の必要額、返済条件を並べて考えます。返済や借換えなどの個別対応は、契約内容を確認して金融機関と相談してください。BSはその相談の材料ですが、融資の可否を決める表ではありません。

現場のみんなにも、貸借対照表を見てもらうべきですか?

全員に全科目を説明するところから始めなくても構いません。会社の情報の扱いを踏まえ、取り組みに必要な範囲を共有しましょう。たとえば材料の滞留を調べるなら、その対象と記録を使い、何を確かめたいかを伝えます。

数字の意味を説明し、現場で分かっている事情を聞き、次に何が変わったかを返します。表を見せて終わりではなく、現場の工夫と会社の状態をつなぐことが目的です。社員の知恵が必要だと伝わる使い方を、一緒に育てていきたいですね。

まとめ|会社の歩みを確かめ、次の改善をみんなで選ぶ

貸借対照表は、ある時点の資産・負債・純資産を示し、会社がこれまで選んできた投資や資金調達、損益の結果を考える入口になります。数字を現場の品物や設備、入金と支払いへつなぐと、次に確かめることが見えてきます。

数字を知ることは、次に動くための準備です。

資産の額が大きいから安心、借入が多いから悪い、純資産が少ないから会社に価値がない。そんな決め方はしません。何が残り、何を支え、いつ動くのかを確かめる。数字と仕事の事情を合わせて考えることを大切にしましょう。

次の一歩は、気になる残高を一つ選ぶことです。明細を見て、その仕事を知る人と話し、次に確認することと日付を決めてみてください。材料の置き場所や使う予定が分かるだけでも、その後に調べる負担を減らすきっかけになります。

社員の工夫が活きて、現場の仕事が進めやすくなる。その積み重ねが会社を元気にし、地域で仕事を続ける力にもつながっていく。財務の数字も、その歩みを支えるために使っていただけたらと思います。

現場の記録をどう整え、チームで改善を続ける仕組みへつなぐか迷われたときは、COTNASの支援サービスをご覧いただき、ご相談ください。会計上の扱いは会計専門家とも確かめながら、現場と経営をつなぐ一歩から考えていきましょう。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

西本 文雄(にしもと ふみお)のアバター 西本 文雄(にしもと ふみお)

西本文雄|株式会社事成す代表取締役・中小企業診断士。製造現場、生産管理、購買の実務経験を生かし、中小企業の経営と現場をつなぐ支援に取り組む。5S活動を入口に、社員が自ら考え、チームで改善を続けられるしくみづくりを重視。現場で働く人の知恵と経営者の想いを結び、品質向上や生産性向上につながる実践的な情報を発信しています。難しい理論より、日々の仕事で試せる工夫を大切にし、現場目線でわかりやすく伝えます。

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