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中小製造業の労使関係改善|社長と社員の対話を、信頼と継続する現場改善につなげる実践法

2019 7/15
ヒトと組織の育て方
2019年7月15日2026年10月15日
健全な労使関係の作り方!対立を和らげる意外な方法とは?

皆さま、こんにちは。西本文雄です。「うちは何でも話せる会社にしたい」。そう思って現場に声をかけたのに、返ってくるのは「特にありません」。ところが、納期の直前になると、材料の置き場や応援の頼み方で不満が出てくる。一般的な場面ですが、御社にも思い当たることはないでしょうか。

社長は会社を守ろうとしている。働く仲間も、今日の仕事をきちんと終わらせようとしている。それなのに、なぜ話がすれ違うのでしょう。「もっと会社のことを考えてほしい」と言いたくなる日もありますよね。でも、その前に、現場から見えている景色を一緒に確かめてみませんか。

最初にお伝えしたいのは、対話は、話す場をつくって終わりではないということです。現場の声を聞き、会社として考え、決めたことと理由を本人へ返す。その往復が、次も話してみようと思える関係の土台になります。

2019年の元記事では、会社の状況を伝えること、目指す姿を共有すること、話し合う機会を設けることを取り上げました。その軸と、食卓を囲む提案は残しながら、今回は5S活動を入口に、聞いた声を現場の改善へつなげる方法まで整理します。どうぞ、御社の仲間の顔を思い浮かべながらお付き合いくださいませ。

目次

そもそも労使関係とは?

労使関係は、働く人と雇用する側との関係です。一人ひとりの働き方や仕事の進め方の話もあれば、労働組合と会社が話し合うこともあります。この記事では、中小製造業の社長と現場の仲間が、日々の仕事について話し、改善を進める関係を中心に考えます。制度上の協議や個別の労働問題は、それぞれに必要な手続きや相談の場で扱うことが前提です。

同じ工場でも、見えているものが違う

社長には、受注の先行き、材料費、支払い、設備の更新が見えています。一方、現場には、図面の変更が届かないこと、工具を探す手間、急な仕事が割り込んだときの段取りが見えています。どちらも会社の仕事なのに、見ている範囲と、すぐに困ることが違うのですね。

例えば社長が「今月は特急の注文を受けたい」と考えていても、現場が「また予定が変わるのか」と受け止める場合があります。社長には大切なお客さまの事情があり、現場には進行中の仕事を守る責任があります。ここで相手を会社思いではないと決めつけると、工程の入れ替えや必要な応援という、話すべきことが隠れてしまいます。

私は、まず見えている事実を交換したいと思います。なぜ受けたいのか。何がどこまで進んでいるのか。受けるなら、何を動かし、誰が相手先と調整するのか。「協力してくれ」の前に、この材料を出すことです。事情が分かっても意見は違うかもしれませんが、少なくとも何を判断する話かは共有できます。

「仲間」という思いを、相手にも要求しない

社長が社員を大切な仲間だと感じることは、素敵なことです。ただ、「家族のように思っているのだから、こちらの気持ちも分かるはず」と期待を重ねると、少し話が変わります。働く人には、仕事以外の暮らしも、守りたい時間もあります。それを大切にする姿勢と、仕事に誠実であることは両立します。

仲がよいからこそ言いにくいこともあります。繁忙期の応援を断りにくい、社長が決めた置き場へ意見を言いにくい。「何でも言って」と声をかけても、その一言で立場の差がなくなるわけではありません。意見が違っても話が続き、引き受けられない事情も相談できる。その扱い方で、会社が言う仲間の意味が伝わると思うのです。

元記事には、社員が会社経営へ関心を持ちにくいことへの率直な思いがありました。今あらためて考えるなら、関心の有無を先に決めず、関わるための情報と機会が届いているかを確かめたいですね。生産予定を決めた理由も知らされず、結果だけを求められていたら、意見の出しようがない場合もあります。

話さない理由を、やる気だけで説明しない

言いたいことがあっても、うまく言葉にできない人はいます。皆の前では言いにくい、以前話しても返事がなかった、相談すると全部自分の仕事になると思っている。もちろん、今は困り事がない場合もあります。沈黙だけを見て、一人ひとりの考えを推測しないことです。

中小機構のJ-Net21「社長と従業員の関係構築」でも、話を聞くことや、感情的な反応、相手への思い込みを見直すことが取り上げられています。問いの出し方だけでなく、答えを受け取った後の自分の反応も、社長が確かめられることなのですね。

もし以前の話を途中で遮った覚えがあるなら、「あのときは最後まで聞けなかった。今日は続きを聞きたい」と具体的に伝えてみる。そこからすぐに本音が出なくても、せかさず、日々の返答を続けましょう。一度の会議で心を開いてもらおうとするより、次に話したときの扱いを変える方が、会社としてできることは明確です。

健全な労使関係とはどんな関係?

私が考える健全な関係は、全員が同じ意見になることではありません。会社が続いてほしい、安心して働きたい、よい製品を届けたい。その願いを、立場の違いを残したまま話せる関係です。反対意見が出ること自体を、関係が悪くなった証拠にしないでください。

意見の違いを、仕事の条件へ戻せる

例えば、工具の共用化に対し、ベテランさんが「今のままがよい」と話したとします。協力的でないと受け止める前に、使う頻度、精度の確認、持ち運ぶ経路を聞いてみましょう。共用すると取りに行く回数が増えるのか、別の人が使った後の状態が心配なのか。理由によって、直すところは違います。

若い仲間が「置き場をもっと分かりやすく」と言っているなら、その声も同じように扱います。どちらの人を立てるかで決めるより、誰が使っても迷わず、必要な状態で取り出せるかを一緒に確かめる。意見を、人の好き嫌いから仕事の条件へ戻すのです。現物の前なら説明できることもありますから、会議室だけで結論を急がなくてよいと思います。

最終的に全員の希望を採用できない場合もあるでしょう。それでも、何を比べ、何を優先して決めたかを伝えれば、次に確かめる点を残せます。納得していない人に、その場で賛成の言葉を求める必要はありません。試す範囲と確認日を決め、使ってみた声をもう一度聞けるようにしましょう。

守ることと、一緒に工夫することを分ける

賃金、労働時間、休暇、安全などの話を、「会社に協力してくれたら考える」という交換条件にしないことです。働く人の権利や会社の責任に関わることと、現場が知恵を出し合って良くすることは、話の筋を分けて扱います。就業規則があるから、実際の運用にも問題がないとは言い切れません。

厚生労働省の「労使間の話合いの機会の整備」は、働く人それぞれの事情と企業経営の実態を踏まえた話合いを重視しています。仕事の配分を考える際も、会社の予定だけでなく、その人が働ける条件を確認することが出発点になります。

次の表は、日々の声を受け取ったときの整理例です。正式な手続きの要否を、この表だけで判断するためのものではありません。何でも改善会議の議題へ押し込めず、適した場へつなぐために使ってください。

出てきた声 先に確かめること 次の扱い方
工具の置き場が遠い 使用頻度、動線、他の人への影響 現物を見て、小さく置き場を試す
急な注文で毎回予定が崩れる 受注理由、優先順位、応援の決め方 営業と現場で仕事の流し方を見直す
時間や賃金の扱いに疑問がある 本人の申出と記録、適用するルール 労務担当や適切な専門家と確認する
特定の人の言動がつらい 本人が相談できる環境と共有範囲 公開の場で討論せず、個別に相談を受ける
休みを取りにくい 実際の申出や勤務状況、応援体制 制度の確認と仕事の配分を両面から扱う

返答があることを、関係の基準にする

「検討します」が何か月も続くと、現場には止まっている理由が見えません。費用を調べているのか、別の工程の確認が必要なのか、そもそも誰も持ち帰っていないのか。その区別がつかないままでは、次の提案をためらいますよね。すぐ実行できなくても、いま何を確かめ、いつ状況を返すかは伝えられます。

返答には、実行する、試す、追加確認する、今回は見送るという違いがあります。見送るなら「費用がかかるから」で終わらせず、必要な条件と、別の方法を考えられるかを話す。現場に決定権のないことを、提案した本人だけへ任せない。この小さな約束を守ることが、会社への信頼を育てる仕事です。

私は、良い意見を言う人だけが大切にされる職場にはしたくありません。発言が少ない人も、決めた方法を日々使っている人も、改善の当事者です。会議で拍手が起きたかより、翌日の仕事で困り事を相談できるか。そこを、御社の関係を見直す基準にしてみてはいかがでしょうか。

健全な労使関係のつくり方

元記事でお伝えした三つの軸は、会社の状況を伝えること、目指す姿を共有すること、話し合う機会をつくることでした。今回は、それを一件の改善へつなぎ、結果を仲間へ返すところまで考えます。会社の説明を聞いてもらうだけでなく、現場の情報で会社の判断も変えられるようにしたいですね。

会社の状況を、現場の仕事と結びつけて伝える

業績を共有するとき、数字を全部並べる必要はありません。何の話をするために、何を伝えるのかを決めます。受注の変動を話したいなら、品種ごとの仕事の増減や納期への影響を示す。手直しを減らしたいなら、材料の損失だけでなく、再加工で他の仕事が待つことも伝える。経営の数字と現場の実感をつなぐ説明が必要です。

「利益が厳しい」とだけ言われても、工具の置き場を直す意味は分かりません。探す手間が減った時間を、品質の確認や段取りの準備に使いたい。その結果、どの仕事を無理なく進めたいのかまで話します。空いた時間がそのまま現金の利益になるとは限りませんから、効果を大きく見せず、会社としての考えを伝えましょう。

顧客との契約や個人の処遇など、全員へ共有できない情報もあります。何を出せないかだけでなく、その理由と、代わりに共有できる範囲を示すことです。「経営のことは分からなくてよい」と遠ざけながら、急に経営目線を求めても難しいですよね。日々の判断に関わる情報から、少しずつ橋を架けていきましょう。

共通の目標を、使う人が確かめられる形にする

目標が「皆で頑張る」だけでは、何が変わったらよいかが分かりません。一般例として、工具の共用棚なら、「必要な工具を誰でも見つけられ、使用後の状態を確かめて戻せる」とします。使う人に、どこで迷うか、何を確認できれば安心かを聞き、対象の工具を絞って始めます。

ここで速さだけを目標にすると、重い物を無理な位置へ置いたり、確認を省いたりするかもしれません。取り出しやすさ、通路、安全、品質も併せて確かめる。社長がほしい成果と、現場が困らず使える条件を一枚に並べると、話が具体的になります。改善に応じた人へ負担が集まっていないかも、忘れずに見たいところです。

期限は、間に合わせる日と、結果を確かめる日を分けて考えます。棚を変えた日が完成ではありません。使い始めて初めて、補充する人が迷うことや、交替する班へ伝わっていないことが見つかります。試す期間は作業の頻度に合わせ、違う条件でも使えたかを確認しましょう。

5S活動で、会社の返答を目に見える形にする

5S活動は、きれいな現場を見せるためだけの活動ではありません。整理・整頓・清掃・清潔・しつけを通じて、必要な物が使え、違いに気づける状態を保つ活動です。置き場や表示なら、話し合ったことと、実際に変わったことを現物で見比べられます。対話の最初の題材にも選びやすいと思います。

私からの進め方の提案は、次のとおりです。御社の状況に合わせて、対象や確認周期は変えてください。一度に全工場へ広げず、一つの持ち場で回せる形をつくります。

  1. 使う人へ、最近の探し物や戻しにくさを聞く。
  2. 現物を見て、起きた場所と条件を確かめる。
  3. 試す変更、必要な費用、会社が決めることを整理する。
  4. 中心になって動く人と確認日を決め、小さく試す。
  5. 別の人や班の使い勝手と、安全・品質への影響を確認する。
  6. 続ける、直す、戻すを決め、関係する仲間へ知らせる。

意見を出した人が全部の準備をする必要はありません。費用の承認、工程間の調整、活動時間の確保は会社が引き受ける部分です。仲間には現物を使う知恵を出してもらう。役割を分けることで、相談することが仕事の抱え込みにならないようにします。

天国と地獄の話

元記事には、長い箸を使う食卓のたとえ話がありました。同じように料理が並んでいても、自分だけで食べようとすると口へ運べない。向かい合う相手へ料理を運び合えば、食べられるようになるという話です。ここでは、協力の仕方を考えるたとえとして受け止めてください。

私は、この話を社員の性格の善し悪しを判定するためには使いたくありません。相手を思いやる気持ちは大切ですが、工場では、何を渡し、どの状態なら次の人が使えるかも必要です。前工程からの部品に品番と確認状況が分かる表示があれば、後工程は迷わず受け取れる。そんな仕事の渡し方に、たとえ話をつなげたいのです。

誰かが我慢し続けることを協力と呼ぶと、その人が休んだ日に仕事が止まります。分からないことを相談でき、別の仲間も同じように引き継げる形にする。会社はそのための時間や道具を用意する。思いやりが仕事の仕組みとして残れば、顔ぶれが変わっても協力を続けやすくなります。

小さな改善から、チームで考える力へ進む

置き場の変更だけでは解けない、繰り返す不良や工程間の待ちが見えてきたら、次の課題です。発生条件を集め、仲間で原因と対策を確かめるQC活動や、動きと時間、流れを観察するIE手法が役立つ場面があります。手法の名前を覚えてもらう前に、どの困り事を一緒に扱いたいかを共有しましょう。

記録は、困っていたこと、試したこと、確かめた結果、残った課題を簡潔に残します。社内ディスプレイで紹介するなら、写真と短い説明でも構いません。顧客情報や人の写真などの公開範囲を確認したうえで、自社サイトへ改善の歩みを示すこともできます。実績を見せる目的は、見栄えの競争ではなく、御社が学び続ける力を伝えることです。

労使の対立を和らげる意外な方法とは?

元記事が提案したのは、社長と社員が食卓を囲む機会でした。私は今も、いつもの会議とは違う場所で話すことを、一つの選択肢として考えています。ただし、食事をした回数が増えるだけで、関係が良くなるとは限りません。誰が参加でき、何を聞き、その後どう返すかまで設計してみましょう。

食事の席を、親しさの試験にしない

昼食の取り方は人それぞれです。一人で休みたい人、食事に配慮が必要な人、交替勤務で時間が合わない人もいます。夜の宴席なら、家庭の都合や帰宅の交通も関係します。参加を断ったことで、仕事への姿勢まで評価されるのでは、安心して選べませんよね。

食事会を設けるなら、参加しない選択と、食事以外で話せる経路を用意します。参加しない人も、仕事の話を短くする時間、メモ、個別の面談などを通じて声を届けられるようにする。飲酒や私生活の話を求めず、参加者だけへ重要な仕事の情報を渡すことも避けましょう。親しさと、仕事で必要な情報へのアクセスを結びつけないことです。

業務として話合いを設ける場合の時間の扱いは、実態に沿って労務担当等と確認します。「ランチだから」「自由参加という名前だから」で判断しないようにします。親睦のための会なのか、仕事の意見を聞く機会なのかも、参加前に分かるようにしたいですね。

最初は、広い質問より昨日の一場面を聞く

少人数なら必ず話せる、という決まった人数はありません。顔ぶれや関係によっても変わります。最初は社長が話を最後まで聞ける範囲にし、職種や勤務時間によって機会が偏らないようにします。例えば、短い意見交換の時間を設ける案なら、終わる時刻を先に伝え、話題を一つに絞ると準備しやすくなります。

「会社について何か意見は?」は、思った以上に大きな質問です。「昨日、予定どおりに進まなかった仕事はありましたか」「工具を戻すときに迷う場所はどこですか」なら、経験した場面から答えられます。答えが出たら、すぐ改善案を求めず、いつ、どこで、何が起きたかを聞きましょう。

社長にも説明したい事情があると思います。それでも最初は、途中で反論を挟まずに聞く。「それは前にも言ったでしょう」と返したくなったら、今のやり方で何が起きているかへ戻す。聞き終えたら「つまり、材料を探している間に次の準備が止まるのですね」と、自分の理解を本人に確かめます。違っていたら、その場で直せばよいのです。

発言を、すぐに本人の宿題へ変えない

「それなら君がやっておいて」と返すと、現場は困り事を相談するたびに仕事が増えると感じるかもしれません。提案できることと、費用や他工程を調整できることは別です。本人が試したい場合も、どこまでを任せ、何を会社が支えるかを確認します。

誰かへの批判が出てきたら、全員の前で人物の評価へ話を広げず、仕事の事実と、個別に受け止める話を整理します。例えば「引き継ぎが雑だ」という声なら、伝わらなかった項目と、どの時点で必要だったかを確かめる。ただし、本人がつらい思いをしている相談を、その場で言い換えて終わらせないことです。共有範囲と相談先を別に確認しましょう。

一枚の回答台帳で、聞きっぱなしを防ぐ

会の後は、すべての会話を議事録へ残す必要はありません。仕事として扱うことになった課題を、本人と確認して残します。記録例は、「困り事」「確認した事実」「次にすること」「会社側の担当」「返答予定日」「現在の状態」です。録音や実名の記載を当然とせず、何を残し、誰へ見せるかも伝えましょう。

例えば工具棚の話なら、「表示が見えにくい」という声と、使う人が確認した位置を記録します。次に、表示を替えて試す範囲、購入などの承認をする人、使い勝手を確かめる日を書きます。これは記入例であり、特定の顧客の実績ではありません。台帳を埋めることより、約束した日に状況を返せることを優先してください。

すぐに決められなければ、「他の班の使い方も確認してから返す」と伝えます。予定日に結論が出なかった場合も、分かったことと残ったこと、次の返答日を知らせる。現場へ返すことを、完成してから一度だけ行う仕事にしないでください。進んでいない理由が分かるだけでも、次に何を確かめるかは話せます。

AIは、記録を使える形にする道具へ

声が集まり始めたら、困り事を工程別に整理したり、返答待ちを探したり、改善記録を表示用にまとめたりする道具が役立ちます。AIを使うなら、御社の記録の形に合わせた整理ツールとして、小さく試せます。社長が話を聞く代わりや、社員の本音を勝手に判定する道具にはしません。

元の記録へ戻れる番号を付け、AIが要約した内容は本人の話と照合します。似た声をまとめると、重要な違いが消える場合もあります。個人の相談や顧客の情報を、確認なく外部サービスへ入力しないことも必要です。便利になったかは、入力、照合、返答まで含めた手間で考えましょう。道具のために、現場の仕事を増やしては続きません。

続けるかどうかは、仕事の変化で確かめる

会の開催回数や発言数だけでは、関係が良くなったかは分かりません。返答予定を過ぎた課題が残っていないか、試した方法が今も使えるか、別の班に負担が移っていないかを確かめます。数字にするなら、集めた声のうち返答した範囲や、確認日まで進んだ課題を、同じ基準で追う程度からで十分です。

参加者の感想も聞きますが、社長を喜ばせる回答を求めないこと。「次は別の聞き方がよいですか」「今回の後で困ったことはありますか」と、場そのものを直す余地を残します。うまくいかなかったら、食事会を続けることに固執せず、持ち場での短い対話や個別の時間へ変えてみましょう。必要なのは、声が次の仕事へ届く経路です。

よくある質問

話す機会を設けても、すぐに関係が変わるとは限りません。ここでは、始める前と、続ける途中で迷いやすいことを整理します。御社の現場に合わせ、会の形も、記録の持ち方も調整してください。

何を聞いても「特にありません」と言われたら?

その場で本音を出すよう迫らず、話題を具体的な一場面へ絞ってみましょう。それでも声が出なければ、持ち帰って後から伝える方法も案内します。以前の相談へ返事をしていないなら、まずそちらの状況を返すことです。社員の沈黙の理由を決めつけず、話した後にどう扱われるかを、会社の行動で見せていきます。

要望ばかりが出て、会社が応えきれない場合は?

聞くことは、全部をその場で約束することではありません。何に困っているかを確かめ、実行する、試す、追加確認する、見送るを分けて返します。優先順位をつけるなら、安全や品質、仕事への影響、必要な調整を説明しましょう。権利や会社の責任に関わる事項を、任意の改善案と同じ基準だけで後回しにしないことも大切です。

食事会に来ない社員へは、どう接すればよいですか?

不参加の理由を、会社への関心の低さと結びつけないでください。仕事の情報を同じように届け、別の時間や方法で話せる経路を案内します。食事会は交流や対話の選択肢です。欠席した人も、改善を使い続ける仲間であることに変わりはありません。勤務時間や持ち場の違いで機会が偏っていないかも確認します。

匿名の意見箱だけでもよいでしょうか?

実名では言いにくい声を受け取る経路にはなります。ただ、小さな職場では内容から本人を推測できる場合もありますから、完全に匿名性を守れると安易に約束しないことです。閲覧する人と返答方法を決め、個別の事情を掲示で広めないようにします。詳細が分からず対応できない場合の相談先も示し、意見箱へ入れて終わりにしないでください。

労働組合がある場合も、社長との対話を設けてよいですか?

日々の仕事の困り事を聞くことと、労働組合との交渉や制度上の協議は、目的と扱いを分けて考えます。食事会や小さな改善会議で、必要な正式手続きを済ませたことにしないようにします。既存の話合いの仕組みとの関係を確認し、個別の判断は適切な専門家へ相談してください。形式的な交流で、正式に出ている声を遠ざけないことが大切です。

すでに対立が強い場合も、食事会から始めるのでしょうか?

食事会へ集まることが負担になる状態なら、無理に親睦から始めません。まず何について対立しているのか、個別の相談や記録を通じて整理します。労働問題については、厚生労働省の総合労働相談コーナーなど、正式な相談先があります。日々の改善の工夫と、対応が必要な問題の解決を、それぞれ進められる形にしましょう。

どのくらい続ければ、効果が出るのでしょうか?

一律の期間は言えません。過去の経緯、仕事の頻度、扱う課題によって違います。開催回数を増やすより、まず一件について、声を聞き、返答し、試した結果を確かめるところまで進めましょう。道具が使いやすくなったか、相談の行き先が分かるか、返事を待ったままになっていないか。仕事で確かめられる変化から見ていくことをおすすめします。

まとめ:聞いた声を、次の改善へ返す

社長と社員の間には、立場の違いがあります。その違いを消そうとするより、見えている事実を伝え合い、仕事として何を変えるかを考える。私は、そのやり取りを続けられる会社が、チームで改善する力を育てられると思っています。

元記事の三つの軸は、今も出発点になります。会社の状況を現場の仕事につなげて伝える。使う人が確かめられる目標を共有する。そして話す機会をつくり、聞いたことへ返答する。食事会でも、持ち場での短い対話でも、その先の仕事が動くようにしたいですね。

社員を元気にする。会社を元気にする。そして街を元気にする。その歩みの最初には、現場で働く一人の「これ、少し困っているんです」があるのかもしれません。その声が会社へ届き、工夫になり、次の仲間へ渡る。その積み重ねを、大切にしたいと思います。

まずは、御社で返事を待ったままになっている困り事を一つ、確かめてみませんか。まだ解決していなくても、今の状況と、次に確かめることを本人へ返す。新しい会を増やす前に、そこから始められます。

株式会社事成すは、5S活動を入口とする支援サービスとして、活動の記録・共有、現場で働く皆さまへの研修、継続できる体制づくりを考えています。社長と現場の話を、どの改善から一緒に動かせばよいか迷ったときは、お問い合わせから今の困り事をお聞かせください。御社の仲間の知恵を、仕事の仕組みへつなげていきましょう。

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この記事を書いた人

西本 文雄(にしもと ふみお)のアバター 西本 文雄(にしもと ふみお)

西本文雄|株式会社事成す代表取締役・中小企業診断士。製造現場、生産管理、購買の実務経験を生かし、中小企業の経営と現場をつなぐ支援に取り組む。5S活動を入口に、社員が自ら考え、チームで改善を続けられるしくみづくりを重視。現場で働く人の知恵と経営者の想いを結び、品質向上や生産性向上につながる実践的な情報を発信しています。難しい理論より、日々の仕事で試せる工夫を大切にし、現場目線でわかりやすく伝えます。

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